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不意なアクシデントにより眩暈と頭痛を起こすほどの体調不良を起こした敦嬢であり、
様子見をした方が良かろうという与謝野の見立てに従い、
その日はそのまま トレーニングも調整もなしの休養となった。
昨夜のうちにスマホで何処かへ連絡を取っていたらしい太宰から、
明けての翌日、朝食後のダイニングにて
芥川と中也、どっちかついて来てと声を掛けられた。
「ついて来てって…。」
出掛けるのか?と目顔で訊きつつ、
トレーニングウェアとまではいかないまでも、結構カジュアルないでたちが多いものが、
今日は割とカチッとしたスーツに 曾てを思い出させる砂色の長外套という相手の恰好を見回した中也。
ちょっとそこまでお散歩にという雰囲気ではないようだったので、
「だったら…。」
年長な自分がと、中也がついてゆくと言う。
一応は敦サイドの責任者のお声掛けということで、
だったらこっちも同じ格の自分が立った方がよさそうだと思ったし、
選手である芥川をひょいひょい連れ出されては困るという判断が働いた当然の流れ。
こっちも着替えてくるからと言って
まったりお茶していた席から立ち上がったついでのような口調で、
同じ場に居合わせた顔ぶれの中、まずは芥川を見やると、
「昨日からこっち 俺ばっか傍に居たからな。敦もお前に居てほしかろ。」
ややにんまり笑って こう付け足したのが何とも彼女らしくって。
途端に真っ赤になったのがやはり同坐していた敦嬢で、
「〜〜〜〜っ。///////」
「了解です。」
そこは手前も赤くなれやと、
妙に泰然としていて冷静だった芥川の頭をこつんと軽く裏拳でどやしてから、
女性に割り振られている宿泊スペースの棟へと足早に向かいかけ、
「畏まったところへ行くのか?」
ダイニングの入り口辺りで立ち止まり、連れとなる太宰に訊くところはしっかりしたもの。
そちらはテーブル近くに居残ったままだった、背高のっぽの美丈夫さんは、
「いいや。知り合いに会いに行くだけだよ。情報の刷り合わせみたいなもんだ。」
「判った。」
じゃあ、さほどかっちり堅い恰好をせずとも構わないかなと。
北国寄りなので防寒にばかり気をとられたまま荷を詰めた
持ち合わせのお着替えアイテムを思い出しつつ、
あれとこれと…と頭の中でコーデュネイトを組み立てるお姉さまであったりする。
◇◇
ツイードの長外套にベロアみたいな生地のダボっとしたパンツは
幅広なサッシュベルトで締めたようなウエストも小粋な 腰高なシルエットのもの。
コーディガンでもよさそうなほどの気温だったのでマフラーやスヌードはなしだが、
その代わりのようなほど襟元がゆる大きいバルキーセーターを合わせており。
基本 ゆるくしゅモードがお好きな女傑は、
自分の 小柄とはいえ十分に蠱惑でフェミニンな姿態を重々理解している模様。
それでなくともコケティッシュな面差しは艶麗で、
その上、一応の身だしなみとしてうっすらながら化粧もしてきた中也だったのへ、
お…っと 何でだか意外そうに眼を見張った太宰だったため。
大きめのニット帽を赤毛の撥ねを押さえるようにかぶりつつ
何だその反応はと 双眸眇めて胡散臭そうな顔になった姐御だったものの、
『だってキミ、再会してからこっち ほぼすっぴんだったじゃない。』
『…? そうだったか?』
いやいやいや、この程度には化粧してた。
すっぴんなんて格闘技の鍛錬中でもない限り有り得ねぇと、
丸め込まれかかったのを振り払うようにかぶりを振れば。
『♪♪♪〜♪』
ふふーと笑ってホントともウソとも何とも応じぬところが食えない奴で。
で、ちょっとばかり遠出になるよと云われ、
何処へ行くのか判らぬ中也の分まで スマホ決済でどんどんと支払いを受け持ったまま、
昔ながらのちょっと熱めの足元暖房が郷愁を誘う地方路線から出発し、
乗り換えを挟んでの最後は、東京寄りのとある駅まで新幹線移動した二人であり。
さほど急ぎもしなかったし、年末ではあったが時間帯の関係か さほど混んではなかった旅程。
指定席乗車でなくとも座席に余裕で座れたし、
日頃から鍛えている基礎体力もあってのこと、
ただただ引っ張り回されて予測つかずな道行きとなった中也だったが
疲れもせぬままに目的地とやらへ到着。そんな彼らを待ち受けていたのは、
「よお。」
「…太宰くん、その方は?」
商業施設らしいガラス張りの小じゃれたビルへと入ってすぐ、
ずんと高い最上階まで吹き抜けとなってたロビーフロアに、
観葉植物の鉢をラティス代わりに多めに配置し、
南仏風を気取って展開していたカフェテラスにて。
先に着いていたそのまま それぞれ珈琲を堪能していたらしき
どちらも背広姿の、若いが自分らよりはちょっとばかり年嵩だろう男性二人。
片方は線の細い学者肌な印象のする人物で、
もう片やはそんな彼とは畑違いなのがようよう判る、
現場担当だろう骨太そうな武骨さや精悍さを感じる男性だ。
中也には当然 初見で、逢った覚えのないはずな人物たちだったが、
「やあ、久し振りだね、二人とも。」
此処まで先導してきた太宰がにこやかに挨拶するのは判るとして、
それへ応じた相手側が、連れの中也へも視線を衒いなく向けて来てから、
「こんな関係で顔を合わすのも何ですね。あ、中原さんには久し振りでいいのでしょうか。」
真ん丸い眼鏡をかけた、
いかにも文系という雰囲気の男性の方がそんな風に話しかけてくるに至り。
え?と目を見張ったのも束の間、
「……教授眼鏡か? それと、確か織田とかいう…。」
こういう会見だとさえ聞かされていなかった中也が唖然と眼を見開いたのも道理。
現今の生では全くの初対面な二人だというに、
記憶の奥底にあったあれやこれやの中から、
ピントがぼやけていたもの、ぱちりと合った瞬間に、
かつての記憶というか彼らに関して知っていた色々が
どこからか浮かび上がってくるあの感覚がまたぞろ訪れる。
自分はさほど直接接す機会はなかったが、
片やは確か坂口安吾といって、専属情報員としてあの世界のポートマフィアに籍を置いており、
抗争などで命を落とした構成員たちの素性や死因などを精緻に記録していた変わり者。
もう片やは織田作之助といい、暗殺者として射撃の腕を買われていながら、
何を思ったか人を殺めるのは辞めたと宣言し、最下級構成員として雑用担当に階級を落とした男で。
そんな彼らが歴代最年少幹部だった太宰の気の置けない飲み仲間だったことは随分と後から知った。
覚えている限りでは、織田は外国から潜入していた傭兵部隊の長と相討ちになって亡くなり、
また、坂口の方は、その一味を調べ上げるためにと相手組織へも潜り込んでいた、
内務省異能特務課の二重スパイだったと聞いており。
そういったあの頃の肩書はともかく、
こんな格好で落ち合ったということは、完全に太宰の側のコネであろう。
その辺りがするすると飲み込めたらしい顔つきになった中也嬢を、
はいお利口さんとでも言いたげな胡散臭い笑顔にて見やってから、
「紹介するよ。
警視庁捜査…何課だったっけ? に勤めている織田作と、
警察庁公安課の 9課だったっけ? に勤めている坂口安吾だよ。」
「警視庁に警察庁?」
ちょっと待てと、
またまたその切れ長な眼を張り裂けんばかりに見開いた中也であるのも無理はない。
まだ先行きなど決めかねていよう
中学や高校あたりでクラスメートだったという間柄ででもない限り、
似たような呼称、似たような組織でありながらも、
実は畑違いも甚だしいほど接点の少ない、ともすりゃあ敵同士な所属の二人だし、
そんな彼らが、北国で敦嬢の傍づきを任じている太宰とどうやって知り合えたやら…
と怪訝に思ったものの、
“…こいつの権謀術数や何やを駆使すりゃあ、それほど難しいことでもないかもな。”
あの頃だって歴代最年少という年若な身で
裏社会の雄、ポートマフィアという犯罪組織の幹部の座にいた存在だ。
資金や人材以上に“情報”がものを言う現代社会にあって、
ずば抜けた記憶力と駆け引きの才を兼ね備えた頭脳を同じように駆使しておれば、
出来ないことを探す方が難しいという順番かも知れぬ。
様々なコネや伝手を掻き集めるうち、
やや遠隔地の そういう畑で異彩を放っていた彼らとも “再会した”ということなのだろう。
そういう彼らの馴れ初めを、
当たらずとも遠からじな範囲で自身の中にて想定している中也には構わず、
「ちょっと相談に乗って欲しいのだけれど。」
可愛らしいエプロン姿の初々しいウエイトレスさんへ
珈琲とロイヤルミルクティーをオーダーし、
おもむろに相談案件を切り出す太宰で。
遠路はるばるやって来たのだ、
ちょっとした融通の話ではないことくらいは想定内だったのだろうが、
「太宰君の相談事となると、陸州の虎のお孫さんの話でしょうか?」
「おや。そこまで細かく話しちゃいなかったのだけど。」
あくまでも従者という身、仕える主人の素性を漏洩するのはご法度が基本だ。
そのくらいは太宰とて守秘義務として理解している筈で。
この顔ぶれの彼らへも、実をいうとそこまでの詳細は知らせぬまま、
あの時代の記憶持つ お懐かしい顔としての接触しかしてはなかったらしいのだが、
それもどこまでの“建前”であることか。
察してちゃんではないけれど、
そのくらいの忖度、もとえ融通くらい利かせられずして官僚は務まらぬのか、
眼鏡のレンズをきらりんと光らせ、
鏡面となったその奥にて不敵な笑みを浮かべた坂口さん、
「今はもう引退なさってますが、戦後の混乱期にそれは活躍なさった大立者、その筋の列伝中の人ですよ。
彼女が東京に出て来るとなれば、暗黙のうちにですが、公安にも監視や警護の通達が回ります。」
何を今更と言わんばかり、さらさら語る安吾の傍らで、織田もまたうんうんと頷いており。
「一般人なのにか?」
届けられたミルクティーへと会釈をしてから、だが、
驚きは隠せなんだか、中也がやや身を乗り出してそう聞けば、
「もちろん内密にです。」
けろりと安吾が即答し、
合点がいかぬか むむうと眉根を湯せるお懐かしいお顔の女傑さんへ、
やんわりした笑みを更に深めて見せてから、
「というのも、何か起きてからじゃ遅いからですよ。」
例えば、チンピラに絡まれて怖い思いでもなさってごらんなさい。
まま、大御所さん自身はそのくらいでいちいち目くじらは立てないでしょうが、
こっちの結構大きな組の面々が面子潰されたと混線しきりの連絡を飛ばし合い、
どこのシマで起きた騒動だ、ホシは誰だと
警察以上の機動力と過激さで犯人探しと制裁に大騒ぎとなるのは明白です、と。
都心の交通事情でも語るように述べられた“諸事情”だったのへ、
「…それは凄い。」
ぽかんとした中也嬢。
いやいや、この反応こそ真っ当なのだがと思いつつ、
「不謹慎ではありますが、
あの時代のヨコハマのような
“ポートマフィア独り勝ち”って状況じゃありませんからね。」
日本の反社会的組織が看板出してたり公安に指定されているのは
よその国から見りゃ不思議かも知れないが、
地下に潜って挙動が見えなくなる方がよっぽど怖いからだと聞いたことがないかい?と
香しい珈琲に目を細めつつ 太宰が言い足した。
逆にいやぁ、某コメの国で学校や教会なんかでの銃乱射事件とか、
なのに銃規制がなかなかされないニュースとか聞くと、
そこのお国の警察はよほど信頼されてないんだなぁとも思います。
通報して警官が到着するのを待ってても無駄、
来るまでに射殺されちゃうって思われてるってことでしょう?
だから自衛せねばッて云う順番になってる悪循環。
強盗事件ならともかく、学校での乱射事件とかは
一般家庭の学生とかが家の銃を持ち出してってのが多いそうだしねぇ。
まま、もーりんの独り言はともかくとして。
「今 合宿をなさってる辺りも、大御所様の目が届く範囲ですから、
滅多な組織が暗躍しているということはなさそうですが。」
都心へお越しな折ほどの警戒は不要だと思うとの見解を告げた安吾の傍ら、
ジャケットの懐から取り出したパッケージを手にしてちょいと持ち上げ、
目顔で中也へと会釈をしてから、手慣れた所作にて紙巻へ火を点けた無精ひげの連れが。
女性には向かわぬように気をつけて紫煙を吐き出しつつ、
「…ただ、近いとは言えないながら、
それでも日本海から回り込む格好で 半島系の組織の息が掛かってる手合いが、
何の障害物もない田舎だと勝手に解釈して
怖いもの知らずにも潜入してきたうえで支配地にって進出しかかっているとかどうとか。」
織田がぼそぼそ紡いだ付け足しへ、またまた中也がぎょっとした。
「ちょっと待て。何だ、そのきな臭い話はよ。」
物騒な話は起きなさそうと警察庁の官僚殿が言った語尾も消えぬ間合いへ、
その代わりのように怪しい輩が出没しかねないということだろか。
「百歩譲って敦ちゃんへ何らかの横車押してる輩があったとして、
スケートがらみとか、おじじ様がらみの とばっちりとかじゃあなさそうな話に聞こえるんだがな。」
こいつら一体何の話をしているんだと、
言葉の通じぬ異星人だと指摘するよに指差しかねぬ勢い、
椅子から腰を浮かせかねない懸命な中也のお言いようを受け止めた太宰もまた、
「うん。
直接の関わりは通りすがりに絡まれたような程度の話なんだけど、
完膚なきまで、後腐れがないようにって取り計らうとなると、
もうちょっとスケールの大きな話になるかもしれない。」
「はあ?」
身内味方と思ってた彼もまた、そんな言いようを紡ぐものだから、
こいつまで何言い出すものかと、
上げかけていた腰を籐編みの椅子の上へ とさんと落とす赤毛のお姉さまであったが、
「向こうさんが 何処で“敦ちゃんがどういう立場の人物か”に気づくかで
こっちの対応も違って来るんだよねぇ、うん。」
「当初から気づいているほどの規模の組織じゃあなかろうよ。」
「ですよね。だったらあんな場所へそもそも逃げ込まない。」
男衆3人が何にか納得ずくで話を進めておいでなのへ、
「…何の話をしているんだ?」
あとの二人はその筋の専任だからともかくとしつつ。
だがだが、此処まで一緒に来たこやつは違うはずなのにと、
すぐ隣に坐す恰好の太宰へと恐々と声をかけてみる。
相変わらず腹芸が達者な奴だなと思ってだろう、嫌そうに顔をしかめた中也を見やり、
「君だけは、そのまま真っ当な一般市民でいてください。」
安吾がはぁあと深々ため息ついてから視野に真摯な貌で言ってきたため、
ああやっぱりそういう話かと察しだけはついたのだった。
◇◇
詳細はこんな開けたところで話せるものじゃあない、
専用の回線設けましたから、其処へこれ使ってアクセスしてくださいと、
手のひらに隠れ切るよなUSBメモリを手渡す安吾であり。
絶対的に極秘なことなればこそ
此処まで遠路はるばるやって来ての “手渡し”での情報伝授となったらしく。
それだけの逢瀬だったのか
あっさりと “じゃあまた”と手を振り合ってお開きとなった、それは短い会合で。
では帰ろうかと、途中からはただのお付き状態だった中也へ手を伸べて立ち上がらせ、
プラザビルだったらしき建物の外へ出る。
年末とはいえ気団の影響かクリスマスほど寒くもなく、
時折吹きつける風にうっと顔をしかめる程度。
そんな連れを 視線と共に歩む歩幅とで器用に誘導しつつ、
太宰は 顔を合わせていたオープンカフェの入っていたビルの隣りの立体駐車場へと向かう。
「駅へ向かわないのか?」
「うん。こっち通った方が近いんだ。」
駅舎ビルと内部階層でつながっているらしく、
なだらかなスロープを下ってきた車を避けようとし、
通路の端へと身を寄せる格好になれば、さりげなく腕が腰へ回されて。
車から遠い側へさりげなく移動させられる。
こういうところは都会の男衆でもなかなか居ないよな、
伊達男なのは相変わらずだよな なんて、ちょっと斜めに思い出しておれば。
見上げて来た視線がちらりと自分へ向いたのへ気づいたか、
薄く笑って…長身ゆえに高い位置にあるしっとりとした美貌あふるる顔、
懐に余裕で収めた小さな女傑の耳元へ近づけるよに俯けると、
「アタシも敦も前と違って男だったのに女になっちゃってるだろ?
だから “皆して”勝手が違うって感じているのかもって意味だよと、
そう言い返しゃあ良かったのに。」
「???」
不意にこんな言いようをする太宰であり、
内容ごとあまりに脈絡のない言い方へ、
怪訝そうに眉を顰めて相手のしゃあしゃあとした横顔を見つめておれば、
「だから。
昨日、敦くんがお悩み相談してたでしょ?」
「? ……、〜〜っ。」
そこまで言わなきゃ判らない?と、だが特に小馬鹿にするような顔にはならずの苦笑止まり、
さらりと言う太宰だったのに対し。
中也の側はますますと怪訝そうな顔をしたのも一瞬、
そこは察しも良い姐御だ、というか
“自分への察しが悪いところが困りものだよ。”
人間、何でも揃ってるものじゃあない。
人情派というか世話焼きな分、自分への関心が薄い。
こうまで間近、下手すりゃあベタ甘なカップルの如くに寄り添う体勢になっているというに。
傍らを通り過ぎる車からのそれ、
わあと赤くなる 主に女性の目線を頬に感じてうるさいなぁと思うほどだのに。
「な…っ。」
赤くもならず、柳眉を跳ね上げた辺り、怒っている貌で間違いない。
曾てだって、立場柄ながら対外的に警戒心は強かったろうが、
それでも自分は後回しにするよなところも多々あったから、
劇的に変わったってわけではない。
むしろ“相変わらず”なんだよねとの苦笑を胸の内にて零しておれば、
「手前、どっかへ盗聴器仕掛けてたんか。」
ドスの利いた声で聴いてくる。
昨日、養生していた敦と語り合ってた折の話のネタ、
憎からず想う芥川からの接し方へ、
ちょっぴり不満なのだとこぼしていた白の少女に向けて、
曾ては同性だったのが今は異性だ、戸惑いもあるのだろうよと諭したことを差しているらしく。
ただ、二人しかいなかった医務室での会話であり、
それを何でまた知っているのかと睨んでくる中也なのへ。
さすが察しのよろしいことよと、太宰も素直にうんうんと頷いてやり、
「だって大事なお姫様だよ?」
「それにしたって、プライバシーってもんが。」
「警察無線と一緒で、誰かに内容を話さなきゃあセーフだと思わない?」
ああ言えばこう言うも健在だなと、
苦々しいもの舐めたように顔をしかめる小さな姐御。
ただただ忌々しいとお顔を歪めるの、静かに受け止めつつ、
“敦くんの声から察するに、赤くなってたような言いようしてたのになぁ。”
二人のやり取りをまんま聞きつつ、
うっかり “同じように恋仲ぽい”自分たちはというよな言い回しをしちゃったことを誤魔化さんと、
慌てふためいてた中也の口調に、おやおやとくすぐったくも期待してしまったのにねぇなんて。
こんの野郎と忌々しいというお顔しか見せてくれない可愛いお人へ、
残念だねぇとそこは本音を多大に滲ませて、形の良い眉を下げた美丈夫様だったりするのである。
to be continued.(18.12.14.〜)
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*文迷のバンドものに引き続き、ワン!では“魔法少女”ですか。
ネタが付きませんな、文ストvv
微妙ながら公式が、ネタ振りの最大手ってどうよ。
とりあえず、こちらの二つの恋模様はじりじり匍匐前進中です。
芥敦は無自覚ですが、太中の方は少なくとも太宰さん大乗り気なんですがねぇvv

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